東レ ファイバー・産業資材事業部門/エアバッグをコロナ前以上に/プロジェクトIで70テーマ

2021年06月24日 (木曜日)

 東レのファイバー・産業資材事業部門は2021年度、エアバッグ用ナイロン66事業の業績を19年度以上の状態に回復させるとともに、衣料用ナイロン長繊維事業の黒字転換を計画する。次の工程に踏み込んで新規用途・客先の開拓を目指す“プロジェクトI(イノベーション)”を強化し、既に取り組んできた70テーマの早期具体化を急ぐ。

 20年度は新型コロナウイルス禍で苦戦を強いられ、好調だったエアバッグ事業にも上半期に一転、ブレーキがかかったものの、下半期から急回復し、現在は糸、生地、縫製の内外全拠点がフル操業を続けているという。

 ファイバー事業では、原料高騰を見据えた先物買いでアクリル「トレロン」がタイトに推移している一方、パンストのインバウンド需要が消失した衣料用ナイロンが大苦戦に転じた。

 21年度は、エアバッグ事業で北米の原料メーカーがフォースマジュール(不可抗力)を表明しており、「ナイロン66原料を十分に調達できないのがもどかしい」(平井正夫ファイバー・産業資材事業部門長)状況を強いられているものの、19年度実績以上に業績を回復させる。

 プロジェクトIでは、既に40テーマを予算化し、30テーマも予算化に向け順調に開発が進展していると言う。ランニングシューズのアッパー、デニム、新タイプの防ダニわた、防獣ネット、高速道路用のコンクリート剥落防止ネットなどでスペックインに取り組んでおり、順調に進めば40テーマで13億円、70テーマで20億円の売り上げを計上できるという。

 衣料用ナイロンでは「想定よりも回復のペースが遅いが、下半期以降の回復を期待できる」とみており、大手アパレルやスポーツブランド向けの拡販でナイロン長繊維事業の損益を21年度で黒字浮上させる。

 優れた白度、トレーサビリティーが特徴の再生ポリエステル「&+(アンドプラス)}の70%を海外で生産しており、既に海外では玉不足気味の状態という。

 21年度はさまざまな用途への販売が滑り出しており、プロジェクトIの一環で開発中のカーシート用ニットを年明けから(糸売りではなく)テキスタイルで投入する。