繊維機械/コロナ前を超える受注も/世界で設備投資が急回復

2021年01月15日 (金曜日)

 糸やテキスタイルで世界的に設備投資意欲が回復している。中国やインドなどが動き出し、秋ごろから繊維機械メーカーは大きく受注を増やしている。新型コロナウイルス禍で約半年、動きが止まっていた分も一気に来た可能性があるため、「どこまで続くかは不透明」との見方も一部ではあるが、昨年11、12月の受注は新型コロナ禍前を上回る水準に達したメーカーも見られる。

(星野公清)

 繊維機械の商況は昨年夏までに底打ちし、特に紡績や編み機が一気に動いた。いち早く動きが戻っていた中国に続いてインド、トルコなど各地域で投資意欲が回復している。

 村田機械の渦流精紡機「ボルテックス」は昨年1~3月まで好調だったが、4月以降は新型コロナ禍の影響を大きく受けていた。引き合いが戻ったのは10月ごろからで、11月ごろから契約が決まり出し、10~12月の受注は過去最高となった。

 東南アジアの動きは他に比べて静かだが、中国、インド、パキスタン、米州など世界各地が大きく伸びている。既存顧客の増設だけでなく、新規に導入するケースも多いという。この期間の受注分は3月ごろからの生産になるが、従来の生産能力を超える水準に増えているため、増産体制を敷いて対応する。

 省人化へのニーズが高まっていることが背景の一つ。圧縮空気の旋回流で紡績するボルテックスは、粗紡、精紡、巻き返しを1台でこなし、リング紡績より工程が省略できる。各国とも新型コロナ禍への対策をとりながらも工場の稼働は継続させているが、工員不足の悩みが浮上している。工程省略で省人化につながるボルテックスの特徴が改めて注目されている。

 世界で稼働する紡機のうち、ボルテックスのようなエアジェット型のシェアはまだ10%に達していないとみられる。しかし、シェアの着実な高まりとともに、ボルテックスに注目し、導入を検討する企業が増えている。

 編み機の動きも急激に戻っている。丸編み機の福原産業貿易の今期(2021年5月期)は、新型コロナ禍で6~8月に低迷したが、9月ごろから回復の兆しが出て、11月ごろから受注が一気に増えた。中国に続いてトルコなどが回復した形で、トルコはベッドマットレス用に続いて、衣料用にも動きが出た。

 同社は個別の要望に応じたカスタム生産が中心で、月70~80台を安定的に生産する方針を長く続けてきた。しかし、11~12月の受注は新型コロナ禍前の水準を上回り、それでは追い付かない状況になっているため、残業などで増産体制を組むことを検討している。

 織機の需要も底打ちしており、津田駒工業は「秋ごろから着実に戻ってきている」と言う。エアジェット織機を中心に、中国やインドでの受注が戻っており、2月ごろから生産に反映してくる。海外だけでなく日本も動きが戻りだしており、今年の市場環境は回復に向かうとみている。