コロナ後の進路 日系商社に聞く(1)/伊藤忠商事 東アジア繊維グループ長 兼 伊藤忠繊維貿易〈中国〉董事長 三村 剛 氏/マーケットイン発想で内需開拓

2020年11月17日 (火曜日)

 新型コロナウイルスの流行をほぼ抑え込んだ中国で、日系商社が活発な動きを見せている。アパレルのネットシフトなど市場変化が加速する中、何に商機を見いだすのか。各社トップにアフターコロナの中国内販の戦略を聞く。

(上海支局)

  ――中国経済の回復が顕著だ。

 第2四半期から回復し、第3四半期には加速している。これに比べ、衣料品の販売はやや遅れた。新型コロナ禍の影響が大きい業界だったと言える。ただこれも8月からプラスに転じた。

  ――客先の状況は。

 ファッションはレディース、メンズともに苦戦しているが、スポーツ・アウトドアとダウンウエアは健闘している。ここ数年、暖冬に泣かされたダウンウエアだが、今年は厳冬予測もあり、期待できそうだ。「波司登(ボストン)」の店頭はお客でにぎわっている。

  ――伊藤忠繊維貿易〈中国〉(ITS)はスポーツブランドの製品OEM/ODMに力を入れている。

 上半期(4~9月)はここが順調に伸びた。ただ新型コロナ禍前の受注分が多い。新型コロナ禍の影響が出るのは提案が終わった21春夏向けで、影響を見極めているところだ。

  ――OEM/ODMを支えるのが、出資・提携先との取り組みだ。

 出資・提携先からのサステイナブル素材への引き合いが強まっている。中でも反応が良いのが、伊藤忠独自のケミカルリサイクルポリエステル「レニュー」だ。話題性が先行したが、実商売につながってきた。

  ――産業資材は。

 これも上半期は好調だった。新型コロナ禍で衛材メーカーがマスクの生産に傾注する中、われわれの既存顧客であるおむつ、婦人向けメーカーの需要に対し愚直に素材を調達、安定供給し続けた。その結果、われわれへの信用が高まり、注文が増えた。

  ――来年以降の事業方針は。

 中国でもお客さまが欲するものを、求められる形で提供していくマーケットインの発想でやっていく。差別化したサステイナブル素材や競争力のあるブランドを切り口に、IT・デジタル関連も絡めて出資・提携先との取り組みをさらに強化する。優良な案件があれば、投資も積極的に検討したい。伊藤忠が日本で持つブランドの新規投入も考えている。