タイ東レグループ/今は“サバイバル”のとき/ユニフォームやサステに活路

2020年09月04日 (金曜日)

 新型コロナウイルス禍で経済に大きな打撃を受けたタイ。東レグループ各社も今上半期(2020年4~9月)は大幅な減収が避けられない状況となった。ただ、ここに来て一部用途で好転の兆しも見える。「今は“サバイバル”の時。キャッシュフローを重視し、固定費削減や在庫管理、与信管理の徹底に取り組む」(在タイ国東レ代表の高林和明トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉社長)とし、今後の反転攻勢に備える。

 現在、タイ国内での新型コロナ感染者数は抑え込まれており、3月に実施された行動制限も5月以降は段階的に緩和されている。それでも経済への打撃は大きく、衣料品消費が低迷する。自動車産業も世界的な生産台数減少の打撃が甚大だった。こうした影響を東レグループ各社も被った。

 紡織のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)は短繊維織物、長繊維織物、産業資材の各事業とも大幅減収となっている。短繊維織物のうちポリエステル綿混織物は約7割が輸出だが、縫製後の仕向け地である欧州市場は新型コロナ禍の被害が大きく、需要が大幅に減退した。中東民族衣装用ポリエステル短繊維織物も苦戦する。

 長繊維織物は元々昨年の暖冬の影響で中わた衣料向けが低調だったところに新型コロナ禍の打撃が重なった。産業資材はエアバッグが自動車減産の影響を大きく受けた。

 合繊糸製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)も上半期は生産が約30%減に。衣料用途は消費低迷による内需の落ち込みが大きい。産資用途も自動車関連は6月まで大幅な需要減退に見舞われた。

 商社のトーレ・インターナショナル・トレーディング〈タイランド〉(TITH)は新型コロナの影響でエアフィルターが活況も繊維は苦戦。特に欧州向け縫製品はオーダーキャンセルや引き取り延期も発生するなど与信リスクへの警戒も高まる。

 総じて厳しい環境が続いているが、自動車関連は好転の兆しがある。「エアバッグ基布は6月を底に回復傾向が強まっている」(TTT)、「エアバッグ原糸も回復が早い。今期中にコロナ前の9割水準まで戻したい」(TTS)とする。

 一方、衣料用途は依然として回復が遅れている。こうした中、比較的落ち込みが少ないのが日本向け、特にユニフォーム用途だ。このためTTTは今後、日本向けユニフォーム素材に力を入れる。TITHも日本向けワークウエアの拡大に取り組む。

 “ウィズコロナ”に適応した商品も重要になる。在宅勤務の普及によってルームウエアなどの需要が拡大していることから、TTTは需要に対応するカジュアル素材の拡充を進める。新型コロナ禍でも欧州向けで再生ポリエステル「アンドプラス」使いが堅調に拡大した。このため引き続きアンドプラスなどサステイナブル素材の拡大を進める。TTSもASEAN地域における再生ポリエステル長繊維製造拠点としての役割を強める。