特集 今治タオル産地(7)/繊維機械/サービス向上もポイントに

2020年07月17日 (金曜日)

繊維機械の足元の販売は新型コロナウイルス禍の影響を受け、設備投資は様子見になっている。このような中で将来に向けた提案が重視されており、デジタル技術の進展を含めて自動化や省人化などユーザーの要望に応える開発が加速しそうだ。技術サービスの向上もポイントの一つになる。

〈今年前半は堅調に推移/技術サービスを強化/イテマ〉

 イテマの日本法人であるイテマウィービングジャパンの織機販売は新型コロナウイルス禍前まで堅調に推移した。ただし、新型コロナ禍前の成約が中心。4、5月は営業活動が思うよう進まず、厳しい状況にある。当初計画通りに設備投資を進める企業がある一方で計画延期もあり、市場環境の回復には一定の時間が必要とみる。

 タオル産地に向けては「R9500テリー」の提案を進めている。複雑な糸使いにも対応できるレピア方式緯糸挿入やパイル糸のテンションコントロール性能などタオルに最適化した技術や、稼働の安定性などが特徴で、新型コロナ禍前の昨年は新たに導入する企業も見られた。

 今後に向けては、技術サービスの強化を図る。この一環でイテマウィービングジャパンが技術者を定期的に派遣し、機械の状態を適正に保つための新しい保全サービスを開始することも検討している。かつては自社内で機械をメンテナンスできる技術者を育てる形が主流だったが、近年はメンテナンスにかける人や手間を省くことを望む企業も増えていることが背景にある。

〈伊藤忠システック/部分整経機の新製品販売/自動検反で省人化〉

 伊藤忠システックは、梶製作所(石川県かほく市)が設計開発した新型部分整経機「KGA163C」の提案を始めた。産地企業の要望を取り込んで開発した機械で、高い性能と導入しやすい価格を実現した。

 タオルや毛織物などの整経に使用でき、精密張力制御でデリケートな縦糸や高張力で整経する必要がある各種素材に対応可能。

 梶製作所が設計し、中国合弁会社である江蘇四星梶泉機械で生産することで高い品質を維持しながら投資しやすい部分整経機が完成した。コントローラーパネルや各操作部分は日本語表示で現場が扱いやすい整経機となっている。アフターサービスも国内で対応できる。

 省人化に寄与する機種として、シェルトンビジョンの自動検反装置「ウェブスペクター」への注目が高まっている。傷の有無や場所をモニターでチェックできる。傷を検知するカメラは7台まで設置でき、0・5ミリの汚れや傷も検知可能。スペックはユーザーの要望に応じてカスタマイズで対応する。織機上に設置するタイプもそろえる。

 自動測色装置「C―TEX」とセットで使うことで、色むらや中希などを自動測色しさらなる品質向上つながる。検査データはモニターに表示され、データベース化して次工程につなげることも可能。分速50メートルで測色でき、染工場だけでなく、縫製工程でもニーズがあるとみて提案を進める。オープンハウスによる実演展示を検討する。

〈ストーブリ/準備機の汎用性を向上/8月に展示会開催〉

 ストーブリは新型コロナウイルスの影響で開催を延期していた「ストーブリエキスポ」を、8月24~28日に、大阪・東梅田の常設ショールームで開く。繊維機械は電子ジャカード機「SX」やタイイング機の最新3種を紹介する予定。「密」を避けるために、会期を従来の2日から5日に拡大するとともに、事前予約制として開催する。

 ショールームは3月にオープンし、タイイング機のテストなど顧客の要望に応じて使用しているが、ストーブリエキスポが正式な初披露となる。今後は、同ショールームを活用し、機械のメンテナンスやトラブル解決についての講習会も開いていく予定。ユーザーの「ある程度までは自社でメンテナンスができるようにしたい」という要望に対応するもの。ジャカード、ドビーとも可能なので、織布企業や機料店向けを含めて、機械の構造についての勉強会なども検討している。

 来年のITMAアジアに向けては、電装関連やコントローラーなどを進化させ、より使いやすい電子ジャカードの開発を進めている。ドローイング機では新しいバージョンを出品する可能性があり、タイイング機も「タイプロ」の進化版の開発を進めている。タイイング機は、汎用性を広げて綿紡績糸などにも対応できる形とする。ドローイング機は、「サファイアS30」の汎用性を高め、要望に応じてスペックを選択できる「S32」を打ち出した。従来は16枠だったが、4、8、12と4枠単位でカスタマイズが可能。

〈ピカノールとエディー/テリーマックスの提案継続/海外での実績を生かす〉

 ピカノールの日本代理店を務めるエディーは、今治産地に向けてタオル用レピア織機「テリーマックス―i」を引き続き提案していく。

 日本での織機販売は堅調で、今年は新型コロナウイルス禍の中でも既に5台を販売した。経済が低迷する中でも底堅く推移する資材用を中心に、衣料用途でも販売した。タオル用途はこれから販売実績を作っていくが、海外での導入実績を背景にレピア織機の新たな選択肢として提案していく。

 テリーマックス―iは、パイル長の調整機能など最新機構を搭載する。産業資材向け製織に対応する高剛性のメインフレームを採用し、稼働安定性の高さも海外の導入企業から高い評価を得ている。

 ピカノールは1975年の「PGW」発売を皮切りに、今年5月にはレピア織機の生産が累計10万台に達した。イーペル工場(ベルギー)は新型コロナ禍で3月下旬に生産を休止したが、4月中旬には再開。足元では納期もほぼ通常の形に戻っている。

 ピカノールは織機の開発において、①スマートパフォーマンス②サステイナビリティー③データによる操作④扱いやすさ――に重点を置いている。今後、これらの開発を加速していく方向で、技術者不足への対応やメンテナンスのしやすさにつながる提案を強化していく。