タイ・クラボウグループ/上半期は精彩欠く/既存・新規双方で打開策

2019年08月29日 (木曜日)

 紡織のタイ・クラボウ(TKC)、紡績のサイアム・クラボウ(SKC)、染色加工のタイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)から成るタイ・クラボウグループは、バーツ高や世界的景気減速の影響で2019年度上半期(1~6月)業績は精彩を欠いた。下半期は反転に向け、既存・新規開拓双方で対策を講じる。

(バンコクで泉克典)

〈高機能生地で周辺国開拓/TKC、SKC〉

 TKC、SKCは今上半期、減収減益と苦戦した。世界的景気減速に加え、ベトナムでの国営・中国系織染加工一貫メーカーの台頭や南アジア系織布メーカーの品質向上による競合激化で販売量が伸び悩む中、生産品の8割超が輸出のためバーツ高で利益も大きく圧迫された。この事業環境は今後も続くとみて、ASEAN周辺国の新規顧客開拓で打開を図る。

 ベトナムなどタイ周辺で縫製拠点が集中する地域では縫製工場独自の生地手配や製品ブランドの取り組みが進む半面、地場調達可能な生地の選択肢は少ない。この点に着目し、縫製工場に定番品の一格上の高付加価値素材の提案を強化する。

 こうした施策は昨下半期に着手し、既に数件が具体化。「今期中にまず売上高の5%程度まで伸ばし、長期的にさらに拡大を図る」(高橋正人TKC社長兼SKC社長)。武器とする強撚糸や複合素材、特殊ストレッチなど独自性の高い生地は、グループ独自の欧米アパレル開拓にも活用する。

 日本向けは現在、カジュアル、ユニフォーム向け厚地・中肉生地が主体だが、カジュアル向けは受注量変動が激しい。そのため、今後は、計画生産しやすいユニフォーム向けの拡大でカバーし、受注量の安定を目指す。

 これに向け、紡織加工3工程一体のプロジェクトで生産効率化とロス削減によるコスト削減を徹底し、スピード感ある顧客対応力も磨く。「見本反やバルクの短納期対応は当然。日欧米から地理的に遠く直接商談の機会が限られるだけに、引き合いにメールなどあらゆる手段で即日対応レベルのスピード感を追求する」

 ロス削減と同時にエコ潮流対応にも活用できる落ち綿の再利用も徹底強化する。日欧米アパレルからエコ・エシカル素材の要望が急増しているため、原綿でもBCI認証品の比率を引き上げて、ゆくゆくは大半をこうした原料に切り替える。

〈加工品種の幅広げる/TTDF〉

 TTDFの19年度上半期(1~6月)業績は減収減益だった。周辺国の織布加工一貫メーカーの競争力向上とバーツ高で、発注者のタイの織布企業が一様に業績不振となり、加工数量が減少した。スレン染料などの染料価格上昇も利益を圧迫した。下半期はTTDF独自の商品開発で薄地まで加工品種の間口を広げるほか、TKCと共同の周辺諸国の新規顧客にも取り組む。

 上半期には染料など生産コスト増の吸収のため省エネ投資を行った。下半期はその効果が発現するため、安定受注確保を目指して商品開発に取り組む。TKCなどグループ一体で、バンコク近辺で紡織加工の一貫通貫で高付加価値生地が生産できる強みを訴求するほか、加工品種の幅も広げる。

 得意とするボトムス・アウター用の中厚地の深堀りするだけでなく、トップス素材の加工も強化する。より薄地で柔らかいポリエステル・レーヨン混や、キュプラ混、「テンセル」混など薄地で加工難度も高い素材に取り組むことで、「周辺諸国の一貫織布メーカーのキャッチアップのもう一歩先を行く」(上野秀雄社長)ことを目指す。