プレビュー・イン・ソウル2019閉幕/日韓関係悪化の影響ほぼ見られず/総合展の色合い強める

2019年09月03日 (火曜日)

 韓国・ソウルで28日から開かれていた国際繊維素材展示会「プレビュー・イン・ソウル(PIS)2019」が30日、閉幕した。今回展のテーマ「Good―Circle(善循環構造)」が反映されたことで、サステイナビリティー(持続可能性)やエコを意識した繊維・生地の展示が目立った。

 インクジェットプリンターやデザインシステム、CAD/CAM(自動裁断機)といった繊維産業機械の展示も充実し、単なる繊維素材展示会ではなく「韓国の繊維・ファッション業界の現況が一目で分かる」総合展の色合いが強くなった。

 欧米を中心に広がるサステイナブルの意識は韓国にも広がりつつある。PIS常連のヨン・テキスタイルは今回展でリサイクルコットンといったリサイクル素材を採用した生地を中心に出展。イ・ウンソップ専務は「PISには17回ほど参加しているが最近エコの意識が強くなっている」と話す。

 大手繊維メーカー暁星(ヒョースン)TNCのイ・チェウ繊維マーケティングチーム部長も、「前回展までは機能性をうたった商品が多かったのに対し、今回はサステイナブル素材が多い」と話す。

PIS開催中の8月28日に韓国を優遇対象国から除外する政令が日本で施行された。輸出管理の対象として設けられたAからDのうち、優遇対象国に当たるグループAからグループBに格下げとなった。軍事転用の危険性が高い品目は契約ごとに許可が必要になるなど、輸出管理が厳格化される。

 冷え込む日韓関係だが、PIS出展企業からは「繊維業界にはあまり影響がない」という声が多い。ただ、「この問題が長引くことで今後影響が出てくるのではないかと危惧している」という声も聞かれた。

 韓国繊維産業連合会(KOFOTI)のチョン・トンチャン副会長は「一般アパレルなどは問題ないだろうが、炭素繊維といった産業素材方面へは影響が出てくるだろう」と指摘。「今までは日本の技術力に頼る部分があったが、今後は代替技術を開発せざるを得ない状況になる」と危機感を表す。

〈PIS出展日本企業/韓国で市場開拓/独自の技術で他社と差別化〉

 PIS2019には島精機製作所の子会社であるシマセイキコリア、東レの子会社の東レインターナショナルコリア、そして日本からは宇仁繊維(大阪市中央区)が出展し、韓国内に自社の商品や技術力をアピールした。

 シマセイキコリアは最新の3Dデザインシステム「SDS―ONE APEX4」を披露した。前世代機であるAPEX3に比べて最大6倍のシミュレーション処理速度を実現。膨大なデザインの中から最適な検索を可能にする機能も搭載するなど、精度・速度ともにグレードアップしたものとなっている。

 具体的なデザインイメージを企画側、生産側で共有できるため、「現物サンプル作成にかかるコストを削減でき、無駄なサンプルを作らないということでサステイナビリティー(持続可能性)にもつながる」。

 ほかにも「ホールガーメント」編み機「MACH2 XS103」をアピール。4枚のニードルベッドを搭載することで速度と生産性が向上、高品質な製品を編むことができるほか、機械もコンパクトになった。

 東レインターナショナルコリアは機能性素材を中心に展示するほか、日本を含めて海外から素材を調達できる東レグループの強みをアピールした。中でも、優れたストレッチ性とストレッチバック性を実現した生地「プライムフレックス」は好評。韓国ではストレッチ生地にスパンデックスを採用するのが一般的だが、プライムフレックスはポリエステルを使用しており、韓国内にあまりないことから関心を集めた。

 PISにはこれまでも参加している宇仁繊維は、新規開拓に加え、既存の顧客に対しても新提案を行うことを目的に出展。ジャカード織りやレースなど、バリエーション豊かなレディース向けの製品を中心に打ち出した。今回展ではハンガーサンプルと併せて見本帳も用意。ハンガーサンプルだけでは伝えにくいカラー展開などを分かりやすく見せて、来場者から好評だったと言う。