旭化成スパンボンド〈タイ〉/上半期は前年超の生産量/タイ周辺の衛材需要伸長で

2019年08月28日 (水曜日)

 旭化成のポリプロピレンスパンボンド(PPSB)製造子会社、旭化成スパンボンド〈タイ〉(AKST)は、紙おむつ向け不織布原反のASEANおよび周辺諸国での旺盛な需要拡大に支えられ、2019年度上半期(1~6月)の生産量は前年同期を上回って推移している(バンコクで泉克典)。

 同社ではこの2年以上にわたりフル生産が続く。今上半期は日本向けのPPSB原反供給量が前年同期を下回り、「日本国内のインバウンド需要がピークだった15年と比べて1~2割程度、供給量は減少している」(及川恵介社長)が、その減少を上回ってタイや周辺国での需要が伸び、全体生産量は増加したと言う。

 順調な量的拡大の一方で、円・ドル・周辺国通貨の全てに対するバーツ高定着が今後の懸念材料となる。販売時はバーツ以外で値決めするケースが多く、バーツ高は直接的に収益を押し下げる。そのため、今後、収益性確保の施策が必要となる。フル生産が続くため品種の組み換え余地は小さいものの各品種の効率的で合理的な生産計画を徹底し、ロス削減に取り組む。

 今年3月には、21年7月の稼働を目指して3号機の増設に着工した。「2年後の3系列体制でキャパシティーに余裕ができる状態を見越して、最適なプロダクトミックスを今から考えていく」。現状では日本、タイの既存設備ともフル生産状態のため「現在日本で開発ステージにある、ソフトさをさらに高めた『エルタス』シリーズ新原反は3号機で量産ベースに乗せることになる」と話す。

 最低賃金上昇に伴う労務コストの管理も課題となる。「8年前の設立時のメンバーは熟練工に育ったが、ラインが長いPPSBでは各所に熟練工が必要。増設もあり、今後はその次世代の育成が必要」として、省力化・生産合理化のための各種機器の導入を進める。ワーカーの定着率を高めるため、作業環境の改善のためのインフラ整備や福利厚生面にも取り組む。

〈「脱プラ」対応も検討中〉

 AKSTでは長期的な課題として、海外での衛生品向け以外の新用途の開拓に加え、衛生用品向けでも「脱プラスチック」潮流への対策に取り組む。既に需要家からこの潮流に呼応した素材を求める要望が出始めており、旭化成スパンボンド事業部内でも対応に向け検討を始めた。PPSBは衛生品など使い捨て用途が大半で、生分解性素材がニーズの中心となる。「素材開発自体は既に行われており、ニーズも間違いなくあるが、量産ベースでのコスト、品質要件の両面で現状ではまだ難しい。ただ、将来的に避けて通れないテーマと認識している」と言う。