村田機械「ボルテックス」/サステイナブルで注目高める/近年の拡販の一因に

2019年07月18日 (木曜日)

 村田機械の空気精紡機「ボルテックス」は近年、サステイナビリティー(持続可能性)の観点からも注目されている。衣料品の大量生産・大量廃棄や海洋プラスチックなどへの関心が高まる中、(1)毛羽が少なく脱落繊維を抑える(2)小ロット、QR生産に向く――などの特性に着目するユーザーが増え、近年の販売拡大の一因になっている。

 大量生産・大量廃棄への対応として必要な時に必要な量だけを生産する機運が高まっている。紡績業界もその対応を迫られる中、ボルテックス精紡機はリング精紡機で必要な3工程を1工程に短縮でき、少量生産やサンプル製作に向く機械として注目を高める。あるユーザーでは少量のサンプリングに要する時間がリング精紡で8日に対し、ボルテックス精紡では3日との実績が確認されている。工程短縮は原料のロス削減、スペース効率の向上から空調、節電にも効果が見込める。

 工程短縮は機台清掃など仕掛け変更に伴う時間を削減する。停台時間の削減は稼働効率の損失を防ぎ、さらなる小ロット化も可能にする。通常のリング精紡では粗紡、精紡、巻き取りの全工程の清掃に10~18時間を要するが、ボルテックス精紡では5時間で済むと言うユーザーもある。同社は清掃に必要な時間で生産する量を最小ロットと定めており、ボルテックスで小口対応や操業効率向上を実現している。

 毛羽が少なくピリングを抑える特長があるボルテックス精紡糸は、織り・編み工程での風綿の抑制、製織準備での糊剤の低減、編み工程の斜行の低減に貢献する。クリアなプリントが可能で、デジタルプリントでも注目を高めている。

 さらに抗ピリング性で洗濯時の毛羽落ちが少なくなるため、最終製品を長く使える。脱落繊維はリング精紡糸に比べて大きく削減でき、仕上げ工程や洗濯で発生するマイクロポリエステル脱落の問題にも有効。最近導入が進むフィラメントコアヤーン装置は、脱落しない長繊維と複合させることで、機能性を備えつつ短繊維の使用量を減らすなど「マイクロポリエステル問題に対してユニークな提案ができる」と注目を浴び始めている。この点でもサステイナビリティー向上に貢献できることから、幅広いコアヤーンへの対応を計画している。