タイ東レグループ/提案・商流を拡大へ/紡織加工2社統合で競争力強化

2019年03月06日 (水曜日)

 タイ東レグループは2019年度(20年3月期)の重点課題として、7月に予定するポリエステル・レーヨン紡織加工のタイ・トーレ・テキスタイル・ミルズ(TTTM)と短繊維紡織加工・エアバッグ基布製造のラッキーテックス〈タイランド〉(LTX)の合併を契機とした競争力の強化を掲げる。在タイ国東レ代表であるトーレ・インダストリーズ〈タイランド〉(TTH)の髙林和明社長は「あくまで前向きなグループ再編。さらなる拡大を目指す」と強調した。

 髙林TTH社長は、タイ東レグループの繊維事業の現状に関して「タイ経済は自動車産業などリードして好調に推移しているが、繊維は決して良くはない。薬剤・染料高騰によるコストアップやバーツ高による輸出競争力の低下が収益を圧迫している」と分析する。

 実際にLTXは18年度、減収減益で推移した。薬剤・染料高騰など用役費上昇に加え市況も低迷。衣料用短繊維織物はインドネシア品や中国品との競争が激化している。長繊維織物も、裏地が計画通りながら表地は日本向けが暖冬の影響で減少した。エアバッグ基布はタイ内販が堅調も中国向けは中国の自動車生産減退で荷動きが鈍化している。ナイロン66の価格上昇も収益を圧迫する。

 一方、TTTMは市況の悪い輸出を意図的に縮小し、タイ国内の学童服や官需・民需ユニフォーム地に特化する戦略が成功し、18年度は増収増益で推移した。ただ、ニット生地は日本向けが取引先の在庫調整などもあってやや動きが鈍い。既に国内販売比率が80%を超えたことから、さらなる内販拡大が望みにくい状況にある。

 このため19年度は両社統合によるシナジー発揮を目指す。TTTMは現在、新商品開発と新規販路開拓を進めており、輸出の再挑戦も目指している。「統合によって商品提案や開発のメニューが増えることを生かし、販売拡大を狙う」(増井則和TTTM社長)。LTXも衣料用短繊維織物で従来の生地商向けだけでなくアパレルへの直接提案を強化し、長繊維織物も裏地で縫製工場への直販を増やす。「統合を契機に、こうしたアパレル直販を拡大する」(前川明弘LTX社長)ことを目指す。

〈TTS/再生ポリエステル拡大〉

 タイ東レグループの長繊維製造会社、タイ・トーレ・シンセティクス(TTS)は再生ポリエステル糸など高付加価値糸の生産・販売を強化する。

 同社の18年度業績は原料高騰と乱高下の影響で苦戦した。衣料用はポリエステル長繊維がスポーツ用途を中心に堅調だったがナイロン長繊維は輸入糸との競争が激化。産業用もエアバッグ向けナイロン66が海外糸との競争で苦戦する。ナイロン6は主力の漁網用が需要減退も競合する韓国糸との住み分けが進んだことで底入れした。ポリエステル長繊維はシートベルト用が中国向けで勢いがない。

 こうした中、「特に衣料用途では高付加価値糸へのニーズが高まっている」(奥村由治TTS社長)ことから、延伸加工糸(DTY)の競争力に加えて付加価値のある糸の生産・販売を強化する。その一つが世界的に注目の高まる再生ポリエステル糸。既に同社は一定規模の再生ポリエステル糸を生産していることから、19年度は「東レの東南アジアにおける再生ポリエステル糸製造の拠点として存在感を打ち出す」ことでスポーツ用途などでの販売拡大を目指す。