デサント/「同じ土俵で話したい」/TOB反対表明の狙い

2019年02月12日 (火曜日)

 デサントの辻本謙一取締役常務執行役員は7日、伊藤忠商事によるTOB(株式公開買い付け)に反対すると同社が発表したことについて、動画、写真撮影を禁じた「レクチャー」を、報道関係者を対象に行った。

 反対を表明したものの、増資や、友好的な第三者に買収してもらうなどの対抗策は「協議していない」と言う。「意見を表明し、同じ土俵で話をしたい」というのが目的のようだ。伊藤忠に何を求めるかとの質問には、「ボタンの掛け違いをまず修正したい。何を求めるかは決めていない」と答えた。

 反対表明の論拠として、伊藤忠の買い付け予定数に上限があるため、株主は、残りの大部分を保有し続けたまま、実質的支配権を取得する伊藤忠による経営のリスクを負うことになると指摘。「当社経営陣は、筆頭株主である伊藤忠だけでなく、残りの株主の利益も代表し、株主の平等性を考える立場にある」と話した。

 また、「伊藤忠と一般株主の利益相反が顕著となり、株主共同の利益のためのガバナンス体制が困難になることに重大な懸念を持つ」とした。

 さらに、伊藤忠が経営を実質的に支配することにより、「株主としての立場とビジネスパートナーとしての立場の利益相反が一層高まり、ビジネス上のパートナー選択の自由が奪われることによる企業価値の毀損(きそん)も懸念している」と語った。

 株主には、公開買い付けに応募しないよう求める。加えて、同社6人、伊藤忠商事出身・派遣2人、社外2人、合計10人の現在の取締役構成を、同社1人、社外4人、合計5人にすることを株主に提案する予定。

〈レクチャー冒頭の辻本取締役の説明〉

 伊藤忠商事には過去の経営危機において大変支援してもらい、感謝している。しかし、大株主としての伊藤忠との関係と、ビジネスパートナーとしての伊藤忠の立場は、利益相反による弊害が生じ得る状態であり、伊藤忠が保有株を増やしてきたこの10年間は、さまざまな問題が顕在化してきた。

 取締役人事において伊藤忠からは、彼らの要望をどれだけ反映できるかを重視した要求が行われ、企業価値向上に必要な人材を選出する当社の考えとは相いれないものがあった。また、伊藤忠からのある派遣社長は、伊藤忠との取引強化を当社の経営の優先事項とし、既に決定している仕入れ先との取引を、伊藤忠に付け替えることを頻繁に要請した。

 公正、公平な取引関係を取り戻すために社長の交代が必要と考え、2013年2月の取締役会で、約1カ月前に伊藤忠へ申し入れを行った上で、現社長の石本(雅敏)の社長就任が決議された。その後、伊藤忠との関係改善に努めたが、事前の連絡もないままに公開買い付けが開始され、残念に思っている。

 伊藤忠の発表には事実と異なる内容が多々あるため、事実を誤認する形で伝わっていることにとまどいを感じている。昨年来、伊藤忠とはさまざまな形でコミュニケーションしてきたが、当社の事業戦略の見直しを再三要求してきたとの主張に対しては、事前連絡なく株式の買い増しを進め、その後10月に「韓国一本足打法」との報道が出た後に初めて要求がなされた。再三の事業戦略見直し要求に応えなかったため、公開買い付けに至ったという主張は合理的ではない。

 公開買い付け反対の意見を表明しているが、まずは当社の主張を伝えるためのもの。デサントの企業価値向上のために、伊藤忠との建設的な話し合いの場が持てることを強く望んでいる。