デサント問題で伊藤忠・小関カンパニー長/「船を沈ませてはならない」

2019年02月04日 (月曜日)

 伊藤忠商事は1月31日、対立を深めるデサントの株式比率を現在の3割から4割に引き上げるためにTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。小関秀一専務執行役員繊維カンパニープレジデントはその意図を、「会話をするため」と説明する。以下、小関カンパニー長との一問一答(一部既報)。

  ――これまでのデサントとの経緯を簡単に振り返ると。

 当社とデサントは50年以上の付き合いがあり、少しずつ株も購入していた。25%を当社が保有するようになっていたが、稼ぎのほとんどを韓国に依存し日本や中国市場を攻めきれていない点や、事業計画の甘さが目立ってきた。昨年6月にはトップ同士の会談の場を持ち、経営方針などについて話し合ったが、聞き入れてもらえなかった。そして8月に30%に買い増した。

 これにより真摯(しんし)な対応をしてくれるようになるかと考えていたが、事前報告なくワコールホールディングスとの提携を発表するなど、不適切な運営が続いた。週刊誌に会談の模様が漏えいし、その事実確認を打診しても、回答がない。当社としては経営改善を進めたいだけ。

  ――40%への引き上げのきっかけは。

 昨年末にMBO(経営陣買収)の案をデサントが出してきたことが最大のきっかけだ。上場を廃止し、ファンドが主体的に経営を担うという内容だった。デサントは事実上無借金の優良企業。なのに、MBOを実施すると巨額の借金会社になってしまう。こんなことをさせてはいけない。デサントの社員が不幸になる。そう思い、今回のTOBに至った。

  ――取締役会を6人で構成するという案だ。

 デサント2人、当社2人、外部2人というアイデアを持っているが、人選を含め、デサントと話し合いを進めていきたい。

  ――TOB後の戦略は。

 日本事業の立て直しと中国事業の強化が柱になる。韓国はシェアが高まり、ピークはもう過ぎた。ここに依存するのは危険。良いうちに次の市場を探すことは経営の基本であり、その対象が日本と中国になる。組織変更や小売り展開、電子商取引(EC)などさまざまなアイデアを持っている。大事なのはスピード感だ。

  ――51%ではなく40%とした理由を。

 51%では企画開発力といったデサントの魅力がそがれてしまう恐れがある。40%でも、他の株主から賛同を得られる自信はあるし、この比率がベストだと判断した。

  ――今回のTOBで溝がより深まるとの懸念もある。

 デサントと溝があるとすればそれは経営陣とであって、社員とではないと認識している。MBOのアイデアが社員から出てくるはずもないし、社員のためにも会社機能を正常化し、成長戦略を描きたい。良い商品を作る力はあるし、やり方さえ間違えなければもっと世界に打って出ることが可能。船頭の誤りによって船を沈ませてはならない。