伊藤忠/デサントにTOB/出資比率4割へ

2019年02月01日 (金曜日)

 伊藤忠商事は1月31日、筆頭株主であるデサントの株をTOB(株式公開買い付け)で買い増すと発表した。1株当たり2800円で、期間は1月31日から3月14日まで。所有割合を現在の3割から4割に引き上げて発言力を高める狙い。

 公開買い付け者は伊藤忠の完全子会社であるBSインベストメント(東京都港区)。TOB後の所有割合は、伊藤忠30・44%、BSインベストメント9・56%(最大)となり、グループとして40%(最大)になる。

 伊藤忠は今回のTOBの目的を、「経営体制の見直しと健全なコーポレート・ガバナンスの再構築を行い、デサントと企業価値向上に向けた建設的な協議が行える協力関係を構築すること」としている。また、デサントの現経営陣が伊藤忠からの「中期経営計画の目標未達と韓国事業への過度な依存」と「コーポレート・ガバナンス体制の脆弱(ぜいじゃく)性」に関する指摘に対し、「真摯(しんし)に検討する姿勢が一向に見られず」、取締役の見直しなどを中心としたコーポレート・ガバナンスの再構築と強化が急務であると判断。それが筆頭株主としての責務であると考えたことが背景にあると説明する。

 さらに、日本事業が実態として営業赤字に近い状況であることや、デサントとワコールホールディングスとの包括的業務提携契約の締結に際する不適切な取締役の運営、デサントと伊藤忠の対話内容が第三者に漏えいした可能性がある点などをデサント側に指摘したものの、「現経営陣や監査役に、真摯に検討し、対策を講じる姿勢が見られなかった」こともTOBに至った背景だと説明した。

〈役員体制見直しも予定〉

 TOB後のデサントの経営体制については、取締役を現在の10人から、デサント2人、伊藤忠2人(うち常勤1人)、独立社外取締役2人に減員する案を持つ。TOB後の経営改善策としては、日本事業の立て直し、中国事業の強化、韓国事業の持続的成長――などを掲げ、「デサントの経営陣と十分な協議を経た上でスピード感を持って実行していく」とする。ただ、真摯な対応がなかった際には、「株主提案を行い、幅広く株主の意見を募り、判断を仰ぐ可能性もある」としている。

 建設的な協議にはならないと想定したことや、情報漏えいなどによりデサントの市場株価の高騰、市場の混乱を招く可能性を危惧し、デサントとの事前協議は行わなかった。

 買い付け予定数の上限を40%に設定した理由は次の通り。(1)デサントに対してより具体的な提案を行うのであれば、デサントの経営についてより責任を持つ必要がある(2)デサントの現経営陣に対して経営体制の見直しや健全なコーポレート・ガバナンスの再構築を促す。それにより見直しが見られた場合にはデサントの企業価値が向上し、投資価値も向上する(3)優れた企画・開発力を有するデサントの社員に、今後もその能力を最大限発揮してもらえるようデサントの独自性を一定維持する。そのため子会社化までは必要ではないと判断。故石本恵一最高顧問の意思も尊重する

 伊藤忠によると今回のTOBはデサントの上場廃止を企図するものではなく、TOB後も同社の上場は維持される予定。

〈事前協議なく一方的なもの/デサント〉

 デサントは1月31日、伊藤忠商事が進めるデサント株式の公開買い付けについてコメントを発表した。

 それによると、今回の買い付けはデサント取締役会への連絡がなく事前協議も行われない一方的なものとしている。今後、公開買付届出書の内容などを精査した上で、速やかに同社としての見解を公表する予定にしており、株主には慎重に行動していただきたいとする。

 デサントが投資ファンドと非公開化の協議を進めている――と伊藤忠とBSインベストメントが指摘している点について、初期的検討を行っているものの現時点で決定された事項はないと表明した。