タイ東レグループ/グローバル戦略で存在感/原燃料高騰への対応急ぐ

2018年09月05日 (水曜日)

 タイ東レグループ各社が繊維事業の高度化を加速させている。バーツ高や原燃料高騰など事業環境が厳しくなる中、高付加価値品の比率拡大や東レのグローバル・オペレーション戦略の中で存在感を発揮することを目指す。

 在タイ国東レ代表であるトーレ・インダストリーズ〈タイランド〉の髙林和明社長は、現在のタイの状況に対して「経済全般は好調だが、繊維分野には波及していない」と指摘。グループ各社とも輸出比率が高いため、現在のパーツ高と原燃料高騰が収益を圧迫。このため2018年上半期(4~9月)は売上高、利益とも前年同期比横ばいで推移する。このため「各社ともグローバル戦略によって自力で商品を販売する取り組みが重要になる」と話す。

 長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)は衣料用が堅調に推移した。タイがスポーツアパレルなどの素材調達拠点となっていることに加え、3年前の延伸加工糸(DTY)導入で競争力が高まった。産業用長繊維はエアバッグ向けナイロン66、シートベルトや縫製糸向けのポリエステルは東レグループ向けを含めて計画通りに推移したが、魚網向けなどナイロン6は需要減退と原料高騰による採算悪化で苦戦している。

 下半期に関しては「衣料用、産業用ともに原料コスト増の価格転嫁を進め、漁網用など低採算品種は生産規模の適正化も検討する」(奥村由治TTS社長)と話す。

 短繊維紡織加工とエアバッグ基布を主力とするラッキーテックス〈タイランド〉(LTX)は、衣料用途を中心に原料高騰によるスプレッド縮小や燃料など用益費増加、染料高騰で収益が圧迫された。一方、エアバッグ基布は堅調に推移している。

 下半期は原料高騰と用益費増の価格転嫁を進めることでスプレッドの維持に努める。短繊維織物は主力の生地商向け販売に加えてアパレルへの直接提案を拡大する。長繊維織物も裏地だけでなく、引き続きアウター素材の拡大を進める。「合理化など体質改善も進めてきた。省エネ投資も実施し、コスト競争力を発揮する」(前川明弘LTX社長)ことを目指す。

 ポリエステル・レーヨン紡織加工のタイ・トーレ・テキスタイル・ミルズ(TTTM)は市況が低迷する中東や南アフリカ向け学販ユニフォーム地を縮小し、タイ国内のユニフォーム地に特化する戦略が成功した。また、ニット生地も拡大した。

 下半期も引き続き「タイ国内のユニフォーム向けに力を入れ、日本向けユニフォーム地の拡大も進める」(増井則和TTTM社長)。ニット生地も米国向けで大手アパレルとの取引への期待が大きい。

 トーレ・インターナショナル・トレーディング〈タイランド〉(TITH)は日系紡織への原料販売やTTTM生産品の販売が堅調。縫製品事業も紳士服郊外店によるタイ内販への製品輸入・生産が拡大した。縫製品事業はタイ国内に加えて周辺国での協力工場網の整備を進めている。今後は「プリンシパル販売の拡大が重要。東レグループと連携して米国への営業活動を強める」(江崎剛TITH取締役)とする。