2018春季総合特集Ⅴ(7)/top interview トンボ/関東での拡販を強化/社長 近藤 知之 氏/東京と岡山の両本社制へ

2018年04月27日 (金曜日)

 学生服製造大手のトンボ(岡山市)は今入学商戦、モデルチェンジ(MC)校を新規に100校近く獲得、スクールスポーツの販売も好調で、前年比2~3%の増収を確保しそうだ。今年7月から東京支社(東京都台東区)を本社化し、岡山本社との両本社制にする。近藤知之社長は、「関東での拡販を強化する」と話し、数年以内に関東へ物流センターの設置も計画する。

  ――第4次産業革命という言葉を耳にする機会が増えてきました。

 当社では年間20万人以上に制服をアソートして供給しています。ピッキングの自動化やICチップ、バーコードなどを活用したアソートが欠かせません。現状、アソートは人海戦術で対応していますが、20万人以上のアソートをこなしていくためには、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)の活用は必要となってくると思っています。

 生産面も設備メーカーとタイアップして、縫製自動化の仕組みの構築も視野に入れていかなければいけません。

 物流と生産の現場ではプロジェクトチームが発足し、オートメーション化に向けた研究に乗り出しました。人手不足の解消とともに、キャパシティーが限られる中、機能や仕組み作りに取り組んでいきます。

  ――今入学商戦はいかがでしたか。

 前年比2~3%の増収になりそうですが、昨年の名古屋の支店化などの経費や設備投資によって経常利益は減益の見通しです。各事業ではスクールは増収、スポーツは大幅増収、ヘルスケアは微増を見込んでいます。

 MC校は全般的に少なかったですが、当社としては100校近く獲得しました。東京、京阪神、名古屋など都市部で売り上げが増える傾向にあります。今年の新入生は6万人減る見通しですが、私学は減っていません。むしろ公立や地方の学校の生徒数が減っているのが実情です。

 店頭販売は昨年、「ビクトリー」ブランドのニット製詰め襟服など従来よりも機能性を高めた新商品を充実させましたが、成果としては不十分です。生徒減の影響と、ネット販売の一部影響があるかもしれません。

 スポーツは250校を超える新規校を獲得し、「ヨネックス」が120校超、残りがウオームアップウエアとしての「ピステスタイル」に着目した「ピストレ」など、自社ブランドのビクトリーが健闘しました。ピストレは100校近く採用があり、素材的にはスクールスポーツ業界で新しい独自開発素材の「ピステックス」を使ったことが、商品的にヒットしました。

 ヘルスケアはニット病衣が数社決まり、これからの需要拡大に期待しています。

  ――新規のMC校は都市部に集中する傾向が強まってきました。

 当社でも東京での売り上げが増える傾向にあります。東京は従業員が70人おり、売上高は50億円を超えています。昨年、首都圏のMC校獲得強化のため、東京企画提案部を課から格上げしていました。

 今年7月1日から東京支社を本社化し、岡山と東京の両本社体制を敷きます。販売、企画の機能も東京本社に持たせることによって、関東での拡販を強化していきます。

  ――売り上げが伸びているだけに供給体制の強化が課題になります。

 物流は主に玉野物流センター(岡山県玉野市)、紅陽台物流センター(同)の2カ所で対応してきました。東京での売り上げが伸びる中、タイムリーに供給するためには関東での物流拠点が必要だと考えています。不測の事態に備えるためにも拠点を分散させた方が良いとも思っています。

 数年以内には物流センターを新設します。先述したようなAI、IoTを活用した最新の物流設備を考えています。

  ――売り上げが伸びるスポーツも工場新設を進めていました。

 約3億円を投資し、スポーツウエアを中心にジャージの上下物やウオームアップウエアなどを生産する「トンボ倉吉工房スポーツ館」を6月20日に竣工(しゅんこう)予定です。ブレザーを生産するトンボ倉吉工房は「トンボ倉吉工房スクール館」と改称、その隣接地にスポーツ館を新設します。

 スポーツ館は従業員20人、年間2万点の生産量からスタートし、1~2年の間に従業員50人、年間11万点の生産量にしていきます。

  ――スポーツでは昇華転写プリントのニーズも増えています。

 美咲工場(岡山県美咲町)には昇華転写プリントの設備を6台まで増やし、カメラ付きCAMも数台あり、充実した設備をそろえています。刺しゅうなど特殊加工を昇華転写に置き換えて対応できるメリットに加え、デザイン性も高く、今後も需要は増えてくるでしょうね。

  ――2018年6月期の見通しは。

 計画している売上高283億円の到達はまだ分かりませんが、増収は確保する見通しです。

〈私の記念日/ドタバタの新婚生活〉

 近藤さんの記念日は、結婚記念日の5月3日。入社してまだ2年目、営業担当をしていた26歳の時で、奥さんとは遠距離恋愛の末に結ばれた。あまり時間が取れなかったこともあり、新婚旅行は北海道を観光。旅行が終わってから、楽しい思い出の余韻に浸ることなく、その足で鹿児島へ転勤し、「慌ただしかった」。家を探す暇もなく、落司量則前社長の知り合いが手配して決めた住まいに入居。「ドタバタした新婚生活でした」と、笑いながら振り返る。

〔略歴〕

(こんどう・ともゆき) 1980年テイコク(現トンボ)入社。99年営業統括本部販売統括部長、2001年取締役営業統括第一営業本部長、03年常務、10年専務。12年9月社長。