タイ・クラボウグループ/商品の高度化 加速

2018年03月07日 (水曜日)

 紡織のタイ・クラボウ(TKC)、紡績のサイアム・クラボウ(SKC)、染色加工のタイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)で構成するタイ・クラボウグループは、紡織と染色加工を組み合わせた高付加価値素材の開発と生産で商品の高度化を加速させている。主力の日本向けだけでなく欧米向けテキスタイル販売の拡大を進める。

〈TKC、SKC/欧米向け生地販売拡大〉

 タイ・クラボウ(TKC)とサイアム・クラボウ(SKC)の2017年度業績は売上高、利益ともに計画通りに推移した。SKCのデニム糸販売が市況低迷でやや苦戦しているが、TKCのテキスタイル販売が堅調。主力のSPAやユニフォーム向けに加えて欧米アパレルへの販売が拡大した。

 佐野高司TKC社長兼SKC社長は「TTDFと連携した素材開発と生産で紡織と染色加工の技術を合わせた差別化テキスタイルが成功している」と話す。特殊精紡交撚糸使いや綿・HWMレーヨン「モダール」複合、ハイパワーストレッチ生地などが欧米アパレルに採用されるなど成果が上がる。

 TKCは輸出比率が高いが、タイでの生産は人件費上昇やバーツ高の影響で定番品の競争力の低下を余儀なくされる。このため18年度に関しても引き続き差別化生地の比率を高め、欧米への販売拡大に取り組む。

 欧米では環境配慮への意識が急速に高まっていることから、クラボウが得意とする電子線グラフト重合加工技術なども応用し、生産工程でののり剤使用量を削減した素材の開発などにも取り組む。

 佐野社長は「TKC、SKCとTTDFのトータルでコスト競争力と高付加価値開発力を高め、クラボウグループの海外生産拠点の中核的役割を今後も担っていく」と強調した。

〈TTDF/コスト競争力を高める〉

 タイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)の17年度業績は加工・販売数量ともに前年実績を下回ったが、TKCとの連携による日本向けや欧米向けの加工が増加したことで加工単価が向上し増収となった。

 一方、利益面は前年実績を下回る。化学品価格の高騰や人件費上昇などコストアップに加えて、難度の高い加工が増加したことで補修・再加工など品質対応費用が増加。今後の環境規制強化に備えて排水処理設備を強化したことや、高難度加工への対応力を高めるために設備更新・保全費用を積極的に投入したことも要因となる。

 このため上野秀雄社長は「18年度はコストアップとの戦いが重点テーマとなる」と指摘。18年も最低賃金引き上げなどで労務費が増加するほか、カセイソーダなど化学品の高騰が続いている。エネルギーコストも増加する。こうした状況に対応するため、加工精度の向上で品質対応費用の削減を目指す。TKCとの連携で欧米向け生地加工などの受注拡大も進め、生産単位当たりの固定費削減による収益力の強化に取り組む。