2017秋季総合特集(74)/top interview/伊藤忠システック/充実の技術サポート/取締役営業第一本部長兼繊維機械第三部長 池端 真滋 氏/新しい機械を積極紹介

2017年10月27日 (金曜日)

 「当社は商社でありながら技術部門を自前で持つことで充実した技術サポートをユーザーに提供できた」――伊藤忠システックの池端真滋取締役は強調する。国内の繊維産業が縮小する中で同社が現在も繊維機械商社として生き残ってきた独自性の一端である。今後も引き続きユーザーのニーズに応えるために海外の新テクノロジーを積極的に紹介することを目指す。

  ――今後を生き抜くための独自性とは何でしょうか。

 歴史を振り返ると国内市場は紡績を中心に繊維機械のユーザーが減少し、それに合わせて織布なども減っていきました。衣料用途が減少する一方で産業資材のウエートが高まっていきました。一方、海外は市場が異動しながらも総体として繊維機械の需要が増加しました。ただし、日本も欧州も繊維機械メーカーの数は大きく減っています。そんな中で当社が今日まで生き抜くことができたのは商社でありながら自前の技術部門を持ち、多くの技術者を擁して充実した技術サポートを提供してきたからです。特に国内はそう。輸入機械の場合、メンテナンスがしっかりとできなければユーザーに認められません。そして技術者が現場に張り付くことで、そこから新しい引き合いをとってくるケースも多いのです。

 一方、輸出に関しても国内で経験を積んだスタッフを投入できたことが大きかった。いわば国内産地のユーザーに人材を育てていただいたわけです。当社はパキスタンへの輸出も大きいのですが、現地に日本人スタッフを常駐させ、伊藤忠商事のカラチ事務所と連携して営業活動できることも大きい。伊藤忠商事が持つ繊維分野での影響力が繊維機械のビジネスでも大きな力になっているのです。海外の新しい技術を常にリサーチし、国内への導入を提案してきたこともあるでしょう。特に資材用機械の分野でその傾向が強かった。

  ――2017年度上半期(17年4~9月)の商況は。

 海外は、ほぼ前年並みで推移しています。パキスタンへの輸出が好調。依然として大型の設備投資が続いています。インドも税制変更による混乱がありましたがそれでも前年並みの販売台数になりました。新興国は電力不足が深刻な国も多く、省エネ性に優れる日本の紡織機械へのニーズは高いです。ベトナムはTPP(環太平洋連携協定)への期待が沈静化しましたが、それでもまだ伸び代があります。また、今後はアフリカなど新しい市場も出てくるでしょう。国内も前年並みです。有力企業が設備投資を続けています。また、日本の機械メーカーが製造していない機種への引き合いも増えていますので、海外製の機種を紹介し、販売しています。

  ――今後の戦略は。

 引き続き海外の新しい機械を国内産地に紹介していきます。例えば最近ではストーンを使わずにストーンウオッシュ加工ができるデニム加工機があります。そのほかにも低浴比液流染色機、織機に搭載する検反システムなどユニークな機種を用意しています。

 提案のためにはもう一度、産地の状況をしっかりと把握することも重要。情報力を強めることで「伊藤忠はなんでもよく知っている」と言われるようにならなければなりません。

 輸出については、次の市場をリサーチすること。一つヒントになるのは海外進出を続けている中国の繊維企業の動きです。彼らの動きから、次の繊維機械の需要地が見えてくると思います。

〈25年前のあなたに一言/山西省にも行こう〉

 25年前は北京駐在で繊維機械の営業を担当していた池端さん。「繊維機械だけでなくODAや自動車関連の仕事もあり、中国中を回っていた」。当時の中国は31の省・自治区・直轄市があった(香港とマカオは中国復帰前)が「30省・自治区・直轄市に業務出張した」。ところがなぜか山西省にだけは行く機会がなかった。「当時は気付かなかったが、山西省にも行っておけば、中国の全省・自治区・直轄市を回ったことになったのに。だから当時の自分には『山西省にも行こう』と言いたいよ」。

〔略歴〕

 いけばた・しんじ 1986年伊藤忠商事入社。北京駐在、上海駐在などを経て2011年伊藤忠システック出向、2016年から取締役。