特集 アジアの繊維産業Ⅱ(3)/紙上参加/タイの“安城化”進む/クラボウ 執行役員 繊維事業部 海外事業統括 中川 眞豪 氏

2017年09月15日 (金曜日)

  ――タイの紡績・織布のタイ・クラボウ(TKC)、紡績のサイアム・クラボウ(SKC)、染色加工のタイ・ディベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)が貴社のグローバルな生産戦略の中核です。タイ事業の現状について。

 当社のタイへの進出は早く、TKCは来年で設立50周年を迎えます。SKCは1995年設立で、操業から20年以上がたちます。TKCとSKCは7割が対日輸出、3割がタイ国内向けです。2017年上半期は対日の受注が堅調で前年同期比増収増益でした。前年同期に苦戦した反動もあります。

 下期は9月まで安定的な受注がありますが、10月以降はバーツ高によって採算は厳しくなると見ています。為替の影響を受けにくいタイ国内向けのシェアを高めたいところですが、タイ国王の崩御で消費マインドの冷え込みが続いており、回復基調にはあるものの、しばらくは難しい状況が続くと予想します。

 TTDFの17年上半期業績は前年同期比で売上高は横ばい、利益は減少しました。前期が近年の過去最高益であったため反動減もあります。タイ国内は17%減収でしたが、TKC経由の対日輸出は20%増収と好調でした。

  ――タイの生産拠点での課題は。

 タイの3拠点に共通する根本的な問題ですが、タイ国内の少子高齢化が進んでいるため人材の確保が恒常的な課題です。工場の省エネ化はかなり進んでいますが、将来を見据え、工場の自動化、省力化も必要になります。少数の従業員の中から、専門的知識を持った技術者や生産管理を任せられる人材など工場経営に必須の幹部人材の育成が急務です。

 品質面は日本とタイとの“人材交流”により近年、かなり上がってきました。とはいえ、まだ日本水準には達しておらず、現地の技術者を紡績・織布のマザー工場である愛知県の安城工場や染色加工の徳島工場に招いて研修させるなど定期的な人材交流を続けることで、品質の水準を国産レベルにまで近づけるよう努力しています。タイ工場の“安城化”“徳島化”をテーマに今後もスキルアップと人材育成を続けます。

 設備面ではTKCはSKCともに2011年の大洪水で被災しており、復旧をきっかけに長年使ってきた大半の製造設備を入れ替えました。

 TKCの現在の日本人駐在員数は12人で、設備はエアジェット織機141台などを保有し、今期は6台の織機を入れ替え、このペースで今後も更新していきます。精紡機とワインダーも今年中に新しくします。

  ――今後の方針は。

 TKCの日本向けワーキングユニフォームの比率はこれまで少なかったのでTTDFと連携を強化し一貫生産体制を確立していきます。タイから欧米向けのカジュアル輸出拡大もこれから狙います。タイの内販とともに今後拡大させられるよう力を入れます。