タイ・クラボウ/サイアム・クラボウ/対欧米比率30%目指す/スピード感上げながら

2017年08月30日 (水曜日)

 クラボウのタイ子会社、タイ・クラボウ(TKC)とサイアム・クラボウ(SKC)は今後、対日以外の輸出拡大に本腰を入れる。狙うのは対欧米。数%という現状の比率を中長期的に30%にまで引き上げる。下半期(2017年7~12月)の重点戦略として「特にスピードの向上を重視しながら引き続き基盤の再強化を実施していく」(佐野高司社長)ことを挙げ、それを将来の輸出拡大につなげる。

(バンコクで吉田武史)

 上半期は前年同期比増収増益と「(市況が)悪いなりに健闘できた」。特に大手SPA向けを軸とした対日ビジネスが堅調に推移した。現状の輸出比率は約7割だが、そのほとんどは対日。バーツ高の影響で輸出が向かい風になりつつある中で約3割を占める。為替の影響を受けにくい「タイ国内向けを伸ばしたい」が、同国衣料品市況は芳しくなく、妙案にも乏しいのが実情と言う。

 下半期は、今期方針として掲げる「基盤の再強化」に引き続き取り組む。エアジェット織機141台を保有し、紡績機や準備機も順次更新しているが、「全体的にスピード感が欠如している」ことを問題視。この改善を「基盤の再強化」の優先順位と位置付ける。企画・開発・生産の各工程でスピードを上げることで受注の山・谷への対応力を引き上げ、販売拡大につなげる。上半期は「やや改善が遅れている」とし、下半期は改めてスピードアップ戦略を徹底する。

 タイ国内向けや対日の大手SPA向け、ユニフォーム地などでコスト競争力を維持しつつ差別化素材の開発を続ける。その際はグループのタイ・テキスタイル・ディベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)やインドネシアのクマテックスとの連携を重視。日本のクラボウやクラボウインターナショナルとも同様に連携を強める。特にクラボウインターナショナルとはベトナム縫製オペレーションの本格化を目前に控える。

 輸出拡大も今後のテーマの一つ。現状の輸出比率は約7割だが、そのほとんどが対日で、対欧米は数%にとどまる。対日を維持拡大した上で対欧米比率を30%にまで引き上げる構想を持ち、そのためにも素材開発とグループ連携に力を入れる。

〈TTDF/対日軸に通期増収ねらう/現場力・人材力引き上げて〉

 タイのクラボウ、丸紅系染色加工場であるタイ・テキスタイル・ディベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)の2017年度上半期(17年1~6月)は、売上高が前年同期比ほぼ横ばいを維持しながらも減益を強いられた。上野秀雄社長は、下半期は上半期比増収増益を目指し、「しっかりと収益力を高めていく」と強調する。

(バンコクで吉田武史)

 同社長によると1~6月の売り上げ横ばいには、タイ・クラボウ経由の対日ビジネスが前年同期比20%増と好調だったものの、不振が続くタイ国内向けが17%の減収だったことなどが影響した。減益は前期が近年の過去最高益だった反動など。

 通期では増収を狙うが、下半期のスタートと同時に18春夏向けのオーダーが順調に入ってきている。先行きも明るく、少なくとも年末まではフル稼働を見込む。同時に、C反率低減やエネスギーコストの低減にも取り組み、利益改善も図る。

 近年は対日を中心に難度の高い加工の比率が高まっている。これに対応するためには、現場力の向上と人材育成とが必要となる。現場力の向上については設備のメンテナンス強化を上半期から順次進めており、今後も「優先順位をつけながら更新と新規設備の導入を検討していく」。

 人材育成については、中堅幹部育成としてクラボウ・徳島工場への研修を実施。これまで1年に2人のペースで派遣してきており、帰国後には昇進・昇給も行うため「モチベーションの波及効果も高い」という。ただしこれまでは「個人で完結しがちだった」とし、今後は徳島工場で学んだことを組織に還元していくことを徹底する。