ベトナムの日系商社/現地製素材開発に本腰/越企業/対日案件へ興味

2017年03月01日 (水曜日)

 「縫製までの国内一貫対応を目指し、現地調達素材開発に注力する」。ベトナムに拠点を置く日系商社の間でこうした声が高まる。コスト低減を志向する顧客の要望が強まっていることが背景にある。現地企業も今後の設備稼働を確保する中で、日本向けの生地開発に関心を示すケースが多いようだ。

 「ベトナムでの生産数量は前年比10%程度増えた」(スミテックス・ベトナム、以下SVL)、「テト休暇の関連もあるが、ダナン以南で対応する生産数量は1月単月では5割は増えた」(ヤギのホーチミン駐在員事務所)など、ベトナムで対応する対日製品OEM・ODMの生産枚数は2016年も堅実な伸びを見せる。

 実際、16年のベトナムの繊維製品輸出は約283億ドル。世界的な市況低迷や周辺国との競争で15年からの伸びは5%程度にとどまるが主力の欧米向けは拡大し、第3位の輸出先である日本向けも、4・6%増やした。日本の衣料品消費が良いとは言えない中でこうした状況は、中国からの生産移管が着実に進展していることを示す。

 こうした縫製基盤に加え、素材の現地調達で要望が高まっている。従来から求められていた機能だが、市況低迷を受けたコスト低減対策のために、ニーズがさらに強まっている形だ。

 伊藤忠商事繊維事業のベトナム拠点、プロミネント〈ベトナム〉は4月にテキスタイル課を新たに設立する。製品OEM・ODMで素材調達を担当してきた現地スタッフ、増強する邦人1人などで構成する4人体制で、シャツ、ユニフォームの活用比率を高め、スポーツウエア向けの素材も着手する。ベトナム国営繊維公団(ビナテックス)との提携強化を通じた現地系、韓国・台湾系との両輪で取り組む。

 SVLはポリエステル・綿混のパンツ用素材、コート用ハイカウント素材、合繊高密度織物などでベトナム製素材の採用を進めるが、さらに中高級品向け素材開発に取り組む。日本向けに慣れている中国シャツ地メーカーのベトナム拠点との開発を視野に入れる。

 ヤギのホーチミン駐在員事務所もオーガニック綿素材「アシャオーガニック」使いのカットソーに着手しているほか、織物の開発も、専任の担当者を入れて重点テーマとする。アシャオーガニック使いや綿・「テンセル」混シャツ地を現地系企業と進める。4月からの現地法人化以降は在庫機能を持つなどで顧客のQR供給ニーズに応える仕組みも検討し、ロットの問題にも対応する考え。

 こうした開発方針に対して「話を聞いてくれる企業は多い」という感触の強さ従来と異なる。米国が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を表明した影響だ。発効は難しくなったものの、直接投資した中・韓・台企業の設備、ベトナムが国策として強化を進める川上・川中産業の設備は立ち上がり、その稼働を確保しなければならない。コストを抑えるサプライチェーン構築が必要な日本向けの事情と、稼働率確保と川上・川中の育成を急ぐベトナム全体の事情が一致し、対日の開発案件に興味を示すことになっている。