ミラノからの手紙/「ITMA2015」報告19/システム/ITが販売手法を変える可能性

2016年01月19日 (火曜日)

 “インダストリー4・0”に代表されるようにIoTへの注目が高まるなか、「ITMA2015」でもITを駆使した生産管理システムも注目された。設備の稼働状況をデータ管理・分析しながら品質・生産効率の向上を図る。これらの提案が進めば新しい工場の在り方が実現するとともに、機械メーカーの販売手法を変える可能性もある。

 ウスターテクノロジーズは糸質検査機「TESTER」やヤーンクリアラー「QUANTUM」、リング紡績全体の糸切れなどを監視する「SENTINEL」、コンタミ除去装置「JOSSI VISION SHIELD」の最新機種などを紹介した。そのなかでも糸質検査機とヤーンクリアラーを「QUANTUM EXPERT3」でつなぎ新しい生産管理の在り方を提案したのが特徴だった。

 村田機械は、顧客サポートの統合管理システム「ムラテック・スマート・システム(MSS)」を提案した。自動ワインダーやボルテックス精紡機の稼働状況をオンラインで管理・分析し、次世代の工場の在り方を提案する。さらに同社は単なるシステム提案だけにとどまらず、村田機械がこれまでに培ってきた紡績に関するノウハウを生かし、機械の診断やソリューションの提案まで加えていくことで独自性を出していく。

 村田機械グループの総合力を生かして開発した無線ネットワーク機器も特徴の一つ。ワールドワイドに工場を構える際、各地域で異なる無線認証を取る煩わしさがあるが、「機械を置けばすぐにつながる。ノイズが多い工場内でも安定して使える」など利便性も強みとしている。

 島精機製作所は横編み機での新管理システムを紹介した。現状、販売している編み機の稼働管理システムをさらに進化させ、各機械の状況をサーバーでデータ管理しながら全体最適を実現する形とした。編み機の稼働状況だけにとどまらず、前後工程を含めて全体管理できる形としている。

 生産管理システムの技術革新は新しい工場の在り方を実現するとともに、繊維機械の販売の在り方にも影響を与える可能性がある。機械メーカーはシステムを導入するユーザーの保守・メンテナンスを迅速に行えるようになるため、ユーザーの囲い込みに活用できる。よほどの技術革新を別にすれば、設備更新の度に各メーカーの性能を比較するのではなく、1つの機械メーカーと強固な関係のなかで工場の設備を構成していくケースが増えることも予想される。