特集 メディカル・介護ウエア2024(1)/機能性訴求で差別化図る/24年市場は堅調見通し

2024年03月27日 (水曜日)

 本紙はこのほど、主要メディカル・介護ウエアメーカー17社を対象に、商況見通しや経営課題などについてアンケートを実施した。市場は比較的堅調に推移するとの見通しが大勢を占め、機能性を高めたウエア開発も盛ん。一方、原燃料費の高止まりやドル円為替相場の急変動が引き続き懸念材料として挙がった。

 2024年度の商況見通しについては「増収」8社、「前年並み」7社、「大幅減収(前期比10%以上)」、「その他」各1社となった。トリプル改定となる診療報酬改定による販売への影響は「特に影響はない」との回答が7社、「更新提案のきっかけになる」が5社と分かれ、売り上げ増または新規納入を広げるチャンスになるとの回答も一定数見られた。

 病院機関や介護施設の経営状況を左右する24年度診療報酬改定が、賃上げや人材確保といった医療従事者の働き方改革に主眼を据えたことで、ユニフォームの導入、更新に予算が配分されるかどうかを巡って各メーカーで判断が分かれたようだ。

 一方、新型コロナウイルス禍でユニフォームの更新を見送ってきたエンドユーザーは多い。人材不足が常態化している医療現場において、福利厚生の充実は欠かせないため、更新需要の高まりとともに今後も市場は堅調に推移していくだろう。その中では商品力の向上と新たなニーズの取り込みでシェア拡大に活路を見いだすメーカーが増えている。

 商品力の中で大きな比重を占めるのが機能性だ。医療、介護現場の屋内温度は季節を問わず高めに設定されていることが多く、従事者にとっては、いかに快適に作業できるかが重要なポイントになる。特に通気性と吸汗速乾性、動きやすさに影響するストレッチ性、それにコスト対策につながる洗濯耐久性を高めた製品が求められる。

 大口納入先でもあるリネンサプライヤーはエネルギー費高騰と人材不足に苦しんでおり、コスト管理に厳しい姿勢を見せている。ユニフォームでは昨年値上げラッシュとなったが、その影響が今年どのように出てくるかは引き続き注視していく必要がありそうだ。

〈新たなニーズ探る〉

 医療・介護分野でも法人を中心にSDGs(持続可能な開発目標)推進への取り組みが本格化してきており、環境への配慮を打ち出した製品需要が高まりつつある。この動きに合わせるように再生素材や生分解性素材の採用、資源循環に向けた旧ユニフォームの回収サービスなどが徐々に受け入れられている。

 メディカル・介護ウエアのユーザー層では、これまで関心の低い分野であったため、対応する製品ラインアップもワークウエアと比較すると少ない傾向が見られたが、これからは新たな需要を創出できる分野としてますます注目度は高まりそうだ。

 一方、ここ数年来の懸念材料となっている原燃料費の高止まりや急激な為替相場の変動は、依然メーカーの悩みの種としてくすぶっており、増収は確保できても利益を伸ばしにくい状況が続いている。

 昨年来の価格改定ラッシュは落ち着いてきており、アンケート結果では今年の価格改定について「実施しない」「検討中」が各5社、「平均10%以上の値上げ実施」1社などとなった。

 市場を取り巻く情勢の中で特に注視している動向についての設問においては、「原材料費や輸送費の高騰」が11社で最も多く、次いで「為替レートの急変動」「病院・介護施設の経営状況」各9社などが並ぶ。メーカーの経営環境においては、引き続き不安定な外的要因から目が離せない状況が続く見通しであることが分かる。

〈介護分野で広まるAS〉

 介護分野でアシトスーツ(AS)の導入が進んでいる。中でもサポーター技術の応用や、空気圧を利用した人工筋肉などを駆動源とするパッシブ型が主流になりつつある。導入価格を抑えられ、手軽に脱着できる点が特徴だ。

 パッシブ型ASを展開する主要メーカー11社に対する本紙アンケートによると、販売先として重要視している業種は、「製造」が11社で最も多く、次いで「介護」8社、「倉庫・運輸」7社、「医療」5社と続く。

〈ユニフォームアンケート協力企業〉

アイトス、明石スクールユニフォームカンパニー、オンワードコーポレートデザイン、カーシーカシマ、KAZEN WLD、クラシコ、サーヴォ、シーエムエル、シーユーピー、住商モンブラン、セロリー、トンボ、ナガイレーベン、フォーク、ボンマックス、ミドリ安全、ヤギコーポレーション(五十音順)