ごえんぼう

2023年11月17日 (金曜日)

 2度の世界大戦と東西冷戦を経て、少なくとも国家間の戦争はないと期待された今世紀。既にそれは幻想となり、再び核の脅威にさらされる▼物理学者のアインシュタインと心理学者のフロイトの往復書簡をまとめた『ヒトはなぜ戦争をするのか?』を読み返す。「人々の真摯な努力にもかかわらず戦争が起こるのは、人間の心自体に問題がある」と考えたアインシュタインが、フロイトに知見を求めた。フロイトは「人間から攻撃的な性質を取り除くなどできそうにない」としながらも、「文化の発展を促せば戦争の終焉へ歩み出せる」と結んだ▼90年も前の往復書簡。ユダヤ系の血を引く二人のやり取りは、ナチズムの台頭で世に出ることはなかった▼発刊された2000年に読んだときには希望を感じたが、ウクライナやガザの惨状を見ると夢物語。文化がどう発展すれば戦争を回避できるのか。無力感に捉われず問い続けたい。