秋季総合特集Ⅴ(14)/Topインタビュー/ボーケン品質評価機構/理事長 吉田 泰教 氏/人財の育成を基軸に/外部とも協働で価値創造

2023年10月27日 (金曜日)

 ボーケン品質評価機構は、第三者試験機関として変革に取り組んでいる。吉田泰教理事長は「現在を“第三の創業期”と位置付け、依頼企業にとっての品質パートナーになることが基本戦略」と話す。こうした戦略の源泉になるのが「人財(人的資本)」。社会や業界の課題を主体的に見つけ、解決に向けて取り組む人財の育成を目指す。

――ボーケンの“最旬”の取り組みは何でしょうか。

 従来の納品前品試験を中心とした検査機関から、依頼企業の課題解決に積極的に貢献する“品質パートナー”への転換を基本戦略としています。その源泉が「人財(人的資本)」。人財の育成を基軸に変革を進める方針にかじを切り、10月には「人財宣言」を発表しました。担当者が主体的に社会や業界の課題を見つけ、相談される関係を築くなど未来をけん引する人財を輩出するために人財戦略を抜本的に見直しました。採用スキームも見直し、新卒だけでなく中途採用によって多様なバックグラウンドを持った人財を確保します。キャリアパスも整備しました。まずは、配属部署の業務を習得。その後、イレギュラー対応や後輩指導を経験し、その先では、マネジメントやコンサルティング、技術の専門家となるようにしました。

 人財を基軸とする前提として「人を大切にする組織」であることが不可欠であり、「現場力の向上」「相互理解・コミュニケーションの強化」「多様性と個の尊重」という考え方が基本。人的資本経営、女性活躍など組織風土改革による現場力向上と多様性確保、自立した人財と組織が共に成長するようなエンゲージメントの向上によるサステイナブル経営を推進します。「ガバナンス」「気候変動」「循環型」「生物多様性」「人権」がテーマの五つのワーキンググループも作り、人財育成と経営基盤の強化を推進します。

――事業の今後の課題や重点施策は。

 ウェルビーイングとサステイナブルを重点課題と位置付け、品質・環境・人権への取り組みを推進します。ボーケン単独では解決できないものも多いですから、業務提携先や業界団体、大学などとの協働で価値創造に取り組みます。例えば再生繊維やリサイクル繊維などの鑑別技術の開発。保有している分析機器「MALDI―TOF/MAS」を活用し、大学と共同でペプチド獣毛繊維鑑別法やリサイクル獣毛鑑別法の開発に取り組んでいます。

 再生ポリエステルの判別技術や羽毛の鳥種鑑別技術の開発も進めています。生分解性試験も既にコンポストでの試験は内製化しており、日本バイオプラスチック協会の認定試験機関にもなっています。今後は、まず国際標準規格(ISO)も発行され、マーク制度もあるプラスチック分野での海洋生分解性試験の内製化と認定試験機関も目指します。

 フェムテック関連ではメディカル・フェムテック・コンソーシアムに参画しました。統一した基準がない吸水ショーツの機能評価方法の開発を進めています。今後の超高齢化社会に向けた商品開発のための試験方法開発を進めます。

 法令関係では消費生活用品安全法が6月に改正され、「磁石製娯楽用品」と「吸水性合成樹脂製玩具」が特定製品に追加されました。試験委託業務として適合確認試験を実施するだけでなく、業界と共に玩具の規制強化に取り組みます。

 人権についてはCSR監査などの依頼が増えています。海外だけでなく国内でも監査員の育成を強化します。環境関連は信州大学と検査機関で結成したLCA(ライフサイクルアセスメント)人材育成コンソーシアムに参画しました。教育支援業務では「BOKENアパレル塾NEO」として拡充し、企業での育成活動でも役割を担います。

 試験機関の存在感を高めなければなりません。依頼企業と幅広いネットワークがあり、国家プロジェクトにも参画する第三者試験機関として担う役割があるはず。現在は当機構にとって“第三の創業期”と位置付けています。11月には「北陸ヤーンフェア」や「ジャパンテックス」、ペットインテリア協会、「海外ビジネスEXPO202東京」の展示会にも参加し、現在のボーケンの姿を見せたいと思います。

〈私の旬/まずは私生活でも“自立”〉

 「10月から東京本部に常駐することになり、単身赴任しているので、特に食事には気を使うようになった」と言う吉田さん。外食する際も栄養バランスを考えたメニューを選択することが増えた。「やはり健康が全ての基本。都内の移動でもできるだけ徒歩にしている」。自立した人材の育成を重視することを重点施策に掲げるボーケン。「まず理事長が私生活の面から自立しないと」

【略歴】

 よしだ・やすのり 1991年日本紡績検査協会(現・ボーケン品質評価機構)入所。2009年近畿事業所長、11年党務事業所長、19年6月から理事長兼最高経営責任者