「品質パートナー」への進化加速/ボーケン品質評価機構 品質支援事業本部

2023年08月23日 (水曜日)

 ボーケン品質評価機構の品質支援事業本部は、2022年4月の発足以来、品質支援、サステナブル支援、教育支援の各業務に取り組んできた。従来型の品質試験機関から、「品質保証パートナー」への進化が加速する。その一翼を担う品質支援事業本部の取り組みが充実する。

〈繊維製品の品質支援/サプライチェーンつなぐ/社内教育としても活用〉

 品質支援業務は、品質管理の基本となる品質基準書の作成・管理をサポートするほか、商品リスクチェック、品質表示の確認なども法令確認まで含めて助言する。工場での品質管理監査(工場QC監査)の支援と改善のための生産技術コンサルティングも行う。

 近年、品質や機能に関する国際標準規格(ISO)や日本産業規格(JIS)の改定、新規発行も多く、景品表示法など表示に関する法令の改正や運用厳格化も多い。このため、原料や縫製リスクの洗い出しだけでなく、法規制や試験提案も含めたサンプルチェックや表示作成などを実施した。

 工場QC監査サポートも新型コロナウイルス禍による行動制限が解除され、実地での監査とオンライン監査を組み合わせた取り組みが拡大する。オンライン監査は依頼企業の社内教育の一環としても利用されるケースが増えている。また、オンラインを含めて検品工場と協業し、サンプルチェックから検品まで連動した品質管理をサポートしている。監査結果や検品データ分析によるコンサルティング業務などの精度向上にも努めた。

 こうした取り組みによって技術力の蓄積も進む。今後はアパレルや商社、縫製工場など各工程の担当者が知識を持ち、自社で品質を担保できる体制構築を進め、そのための人材を育成するステージに入りつつある。サプライチェーン全体の品質管理をボーケンの品質支援業務がつなぐことを目指す。

〈生活雑貨の品質支援/安全リスクチェック重視/事故対応やリコール情報まで〉

 品質支援業務の対象は繊維製品だけでなく日用品や玩具、家具など生活雑貨にまで広がる。生活雑貨は消費生活用製品安全法など安全面での法規制への理解が不可欠だ。このため安全リスクに対するチェックや企画段階での事前試験提案、材質チェック、表示チェックなどをサポートする。製品事故発生時の対応アドバイスやリコール情報の提供までフォローする。

 品質管理マニュアルや品質基準書、危険物管理マニュアル、検品マニュアルの作成や品質管理部署の立ち上げも支援し、依頼企業の品質保証体制の構築を進めた。生活雑貨分野でも依頼企業の全社的な人材育成へのサポートも実施する。

 商品を製造する企業が安全性などに対して正しい知識を持ち、法令順守やリスクチェックを正しく実行できる体制を依頼企業とともに構築することを目指す。

〈サステナブル支援/ESGで高度な専門性/事業戦略と密接に結ぶ〉

 企業のSDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティーに対する取り組みをサポートするのがサステナブル支援事業だ。この1年間で具体的な成果が上がる。ESG(環境、社会、ガバナンス)に焦点を当てた取り組みが進んだ。

 環境に関しては、日本でも気候変動対策や温室効果ガス(GHG)削減に向けた企業の取り組みが一段と要請されるようになった。このためボーケンもサプライチェーンにおけるGHG排出量の算定、ライフサイクルアセスメント(LCA)やカーボンフットプリント(CFP)の算定、循環型マテリアリティーの特定と戦略策定、生物多様性マテリアリティーの特定と戦略策定、サステナブルアパレル連合(SAC)のサステイナビリティー評価ツール「Higg Index」の利用、有害物質管理などに向けたサポートを実施した。

 人権に関する取り組みが拡大しているのも近年の大きな特徴だろう。ボーケンは企業のサステイナブル行動指針や調達ガイドライン作成など人権に対する指針の作成から、人権に関する優先課題の特定や外国人技能実習生の雇用状況ヒアリング、CSR監査など依頼企業のサプライチェーン全体での人権に関する取り組みをサポートする。

 企業がサステイナビリティーを経営戦略に組み込むには、経営陣のコミットメントが不可欠。このため、企業のサステイナブル方針作成やガバナンス体制の構築、マテリアリティーの特定、ステークホルダーとの対話、情報開示などの取り組みに対する支援を実施した。

 サステイナビリティーへの取り組みは、透明性のある情報開示が強く求められる。ボーケンはGHG算定やLCA評価、CSR監査など高度な専門性を提供する。依頼企業のESG全体でのサステイナブルな取り組みが事業戦略と密接に結びつき、その情報を国内外に積極的に公開することを支援する。

〈教育支援/技術力・情報力を発信/「アパレル塾NEO」スタート〉

 教育支援も品質支援事業本部の大きな役割だ。今年も4~7月の間にオンライン型セミナーを11件開催した。サステイナビリティーに関するテーマのセミナーも要望が多いことから、昨年と比べて3倍の開催数で情報発信に努めた。

 モノ作りの基礎から取り扱い表示、機能性、試験方法まで総合的に学べる連続セミナー「BOKENアパレル塾」も「BOKENアパレル塾NEO」としてバージョンアップした。ワークショップ形式も取り入れ、モノ作りに関する講座3部、品質管理に関する講座3部の6部構成で実施する。

 生産工程、性能評価、法規制、品質管理まで幅広い領域のセミナーや研修会を実施し、生産現場経験者による技術的なアドバイスを受けることもできる。教育支援の分野でボーケンは圧倒的な実績を持つと自負する。

 社会が目まぐるしく変化する現在、試験機関に求められる役割も一段と大きくなる。ボーケンは第三者試験機関としての役割を全うし、技術力と情報力を通じて社会や繊維業界に貢献することを目指す。

〈自律的な取り組みをサポート/品質支援事業本部長 野本 由美 氏〉

 品質支援事業本部を創設し、1年が経過しました。その間、「お客様と共同で品質保証をするパートナー」となることをビジョンとし、品質支援、サステイナブル支援、教育支援の各業務に取り組んできました。そうした中、考え方に少し変化もあります。依頼企業が自律的に品質管理やサステイナビリティーへの取り組みを実行できる体制作りのサポートを行うのがボーケンの役割だと考えています。

 また、「“良い品質のモノ”を消費者に届ける」という基本は変わりませんが、そこには「環境」や「人権」への取り組みも含まれています。いずれも欠けることは許されません。依頼企業、さらには繊維産業全体が自律的に品質管理や環境、人権への取り組みを実践できるようになることが求められている。それに向けて、引き続きボーケンとしてサポートしていければと思います。