信州大と4検査機関/人材育成と標準化めざす/LCAでコンソーシアム結成

2023年08月09日 (水曜日)

 信州大学繊維学部とカケンテストセンター、ボーケン品質評価機構、日本繊維製品品質技術センター(QTEC)、ニッセンケン品質評価センターはこのほど、繊維産業のライフサイクルアセスメント(LCA)に関する人材育成に取り組むコンソーシアムを結成した。同大繊維学部に共同で「繊維産業におけるLCA人材育成共同講座」を開講する。

 現在、サステイナビリティーへの要求が強まり、繊維産業も循環型低環境インパクト産業への転換が国際的な課題となっている。そのためには製造段階での環境配慮設計(エコデザイン)が必要であり、その基礎となる環境負荷因子の定量評価指数であるLCAを理解、実践できる人材が欠かせない。

 そうした人材はインベントリデータ(LCA算出のための環境負荷物資名と環境負荷量のデータ)の算出やLCA評価など環境情報解析などができるようになる必要がある。しかし、評価基準が標準化されていないため、企業単独では人材の育成が難しいという課題があった。こうした状況を打開するために同大繊維学部と繊維系4検査機関は共同で「繊維産業におけるLCA人材育成コンソーシアム」を結成した。繊維産業の現場でLCAの算出ができる人材を育成する共同講座を開設する。

 講座は学生のほか検査機関や繊維メーカーの従業員、公設試験場の職員などを対象にサステについての国際動向やLCAの背景、日本のLCAインベントリデータベースである「インベントリ・データベース・フォー・インバイラメント・アナライズ」(IDEA)の基本、サステに向けた、デジタル技術で社会を変革するDX技術の導入などを学び、LCA算出が実施できるレベルの知識・技能習得を目指す。

 検査機関の管理職を対象にLCA標準化や実施提案ができる人材育成を目指す「繊維サステナビリティマネジメントゼミ」も開講する。LCA、エコデザイン、欧州連合(EU)が導入を進めるエコデザイン規則のツールである「デジタル・プロダクト・パスポート」など海外動向に関する調査、LCA標準化に向けた事例研究などを行う。

 コンソーシアムが、川上、川中、川下工程で標準化したLCA評価の基礎を確立するために繊維関連企業からインベントリデータ抽出のための情報提供を受け、妥当性を検証する場を提供することでサプライチェーン全体を網羅するLCA算出のための実践と研究を進める。

 産業界、行政、学術界が連携し、各工程のインベントリデータ算出方法を欧州の法規制を組み込んだ形の国内基準として標準化することを目指し、欧米に展開できる認証制度の構築も目指す。