不織布新書18 ANEX2018開催記念号(3)

2018年06月05日 (火曜日)

〈アンビック/フェルト・不織布で100年/中国でバグ原反生産へ〉

 ニッケのフェルト・不織布製造子会社、アンビック(兵庫県姫路市)は2017年、創立100周年を迎えた。フェルト帽体の製造からスタートしたが、現在は楽器用フェルト、自動車などの資材向け不織布と幅広い製品を手掛ける。

 ANEXでは独自性のある不織布製品を前面に出す。フィルター用や自動車向け吸音材に使用されるニードルパンチ不織布(NP)のほか、トンネル工事でコンクリート中に発生するブリーディング水(コンクリートの内部でセメントなど固体材料が降下することにより表面に上昇してきた水)や残留空気を排出する、コンフィルテープなど特色のあるソリューションも紹介する。

 2017年度(11月期)業績は増収増益だった。18年度もケミカルボンド不織布やNPなどによる「ヒメロン」が自動車の静音材・吸音材向けで堅調。楽器用フェルトも好調が続く。フィルター関連も中国販売が拡大する。

 中国ではごみ焼却場の排煙に対する環境規制強化に伴い、集じんフィルター需要の拡大が見込まれる。同社はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を使った複合不織布によるバグフィルターなどを展開。国内のごみ焼却場向けで豊富な実績を持つ。

 これを生かし、中国子会社の江陰安碧克特種紡織品での生産も計画する。日原邦明社長は「既存品と比べて当社のバグフィルターは耐久性が高い。交換頻度を減らすことによるランニングコスト削減効果を打ち出し、市場開拓を進める」と語る。

 新工場を建設し、22年からの稼働を目指している。中国子会社の江陰安碧克特種紡織品が不織布原反を生産、バグフィルターの縫製は協力工場が担う体制を組む。

 同じく中国子会社の安碧克〈上海〉貿易は原反とバグフィルター製品を販売する計画だ。

 ごみ焼却所への販売は入札が基本のため、入札条件をクリアするために安碧克〈上海〉貿易の増資も決めた。江陰安碧克特種紡織品も新工場建設に向けて増資を予定する。

〈アサヒ繊維工業/加工品製造で存在感/試作も量産機で行う〉

 アサヒ繊維工業(愛知県稲沢市)は、ANEXを「存在感を示す良いチャンス」(浅井耕治社長)と捉えて出展を決めた。ANEXは2012年の韓国開催以来の出展。「ニーズをつかんで開発に結び付けたい」考えだ。

 同社は繊維製特殊加工品の企画開発から製造販売までを行う。それを支えるのが自社開発による成型加工機十数台。フィルターの需要増に対応し、先ごろフィルター製造設備1台を増強した。

 きめ細かな小ロット対応も武器で、量産機で試作を行うため本生産へすぐに移行できる強みを持つ。

 今回展ではオレフィン系、エステル系熱融着繊維を使用し不織布を円筒状に成型したフィルターで単一構造「MF―Ⅰフィルター」と、複層型「MF―Ⅱフィルター」や成型ロッド「ファイバーロッド」をメインに出品する。

 フィルターをはじめとする成型加工技術を生かして新用途開発にも取り組む。06年から社内でフリートークプロジェクトを設けて進めるB2Cもそれに当たる。

 同プロジェクト以前からファイバーロッドの技術を生かしたホワイトボードのイレーザー「セルイレーザー」(グッドデザイン賞を受賞)を商品化するが、同プロジェクトを通じてファイバーロッドの技術を生かした芳香剤を手掛けるなど「次の柱」の育成にも取り組む。

 18年3月期は半導体製造などに使う空圧機器向けフィルター製品の販売が拡大し、10%以上の増収となった。今期も半導体製造向けの需要増が見込んでいるが、一方でコストダウン要求もあることから改善活動を推進する。

〈宇部エクシモ/「エアリモ」など披露/機能製品を市場に届ける〉

 宇部エクシモ(東京都中央区)は、「皆様の“あったらいいな”のお手伝いをさせて頂きます」をテーマに、独自の繊維製品と特長のある産業資材製品をANEXで見せる。見どころの一つになるのが「エアリモ」。その薄さや軽さ、強さを感じることができるよう、同繊維を用いた不織布を触ることができるコーナーを設ける。

 エアリモは世界一細いポリオレフィンコンジュゲートわた。鞘部に低融点樹脂、芯部に高融点樹脂を用いた芯鞘複合繊維ながら、0・2デシテックスの細繊度を実現している。エアリモを使った不織布は薄さや軽さ、緻密さが特長となり、高い機能が求められる産業資材用途の開拓を図る。

 ブースではパネルや説明だけでなく、実際に触れることができ、「素材が持つ特性を体感してほしい」としている。

 同社繊維営業部の主力とも言えるのが、紙おむつなどの衛生材料不織布向けであり、芯ポリプロピレン/鞘ポリエチレンの熱融着複合繊維「UCファイバー」の訴求にも力を入れる。ユーザーの要求品質に応じた商材を用意し、会場には、不織布加工時の熱で油剤が繊維中に潜り込んで脱油されるためフィルターなどに好適な「UCファイバー HR―LE」、不織布加工後に超撥水(はっすい)・撥油(はつゆ)性能を発現する「UCファイバー HR―PLE」、抗菌コンジュゲートの「UCファイバー HR―ID」を並べる。

 高強度・高弾性率を持つオレフィン繊維「シムテックス」、高靭性と新意匠をもたらす「シムテックス複合フィラメント」なども紹介。付加価値の高い市場に、これら機能性を付与した製品を届ける。

〈立体成形技術生かす/大塚産業マテリアル〉

 不織布成形加工メーカーの大塚産業マテリアル(滋賀県長浜市)は上海で開催されたANEX以来、2度目の出展となる。不織布を材料とした立体成形技術がキーテクノロジーで、今回展を通じて新用途開拓を目指す。

 ブースでは梱包用ケースや電子機器の筐体(きょうたい)、芳香剤などの製品、強度を持った不織布による骨材、消臭機能を持つヘルメット用中材などを出品し、来場者とコミュニケーションを深めてビジネスに結び付ける。

 同社はカーシートの表皮とウレタンの間に使用する補強材最大手。主にニードルパンチ不織布を縫製あるいはプレス成形して生産する。国内では約70%のシェアを持つ。