転換期の“世界の工場”/江蘇省大阪展レビュー(後)/中国生産の強みどう残す

2018年06月01日 (金曜日)

 今回の中国江蘇省輸出商品展示会では、タオルや寝装品など生活用品の出展者に比較的多くの来場者が集まった。多くの生活用品出展者が30件以上の商談をこなしたと感触を話し、大半がその半数程度の商談件数にとどまったアパレルOEMと明暗を分ける形になった。

 来場者は一様に中国生産の長所を「ロットの割に品質要求が高く特殊な日本向けも器用にこなしてくれる安心感」と言う。価格に合わせた適地生産しか対応策がないアパレルOEMより、機能やデザイン面の高付加価値化が容易な生活雑貨に商機はまだ多いようだ。

 南通龍都家用紡織品はほぼ全回出展の常連。ハンカチからバッグまで多彩なギフト、販促品向け商品で、継続客への新提案と新規開拓で毎回成果を得てきた。今回の新提案は高精細インクジェット捺染可能な綿マイクロファイバー交織のタオル。昇華転写で小ロット対応可能なポリエステル100%起毛素材のバッグを、同素材使いの各種ケースとともに提案した。

 南通豪門貿易は100円ショップ向けの衣料雑貨類を広く手掛ける。欧米トレンドを反映したデザイン提案や接触冷感などの機能素材の素材提案など「総合的な商品力と価格のベストバランス」で東南アジア品と一線を画し、価格競争の消耗戦を避けられていると言う。

 商品の高付加価値化では織・編み物メーカーの訴求も目立つ。欧州展の出展経験もある織布メーカーの南通鋭晟布業は今回が初出展。合計400台の織機と生地染め・プリント一貫工場に加え、今年末、糸染め設備も稼働させる。生地手配を現地へ丸投げせずに調達先の選択肢を把握したいという縫製商社の来訪が多かったとし、今後は日本のアパレルや生地商への直接輸出拡大の機会もうかがう。

 ニット調のデニムを手掛ける常州市三苗紡織は糸染め、編み立て、洗いまで自社一貫設備が今年稼働。高難度の編み組織も含めた素材バリエーション充実を訴求する。布帛同様の風合いとストレッチやタッチを兼ね備え収縮性など品質安定性も遜色ない編み地に加え、Tシャツやパンツなどの製品でもアピールした。

 次回展は2019年5月21~23の3日間、今回展と同じ大阪市中央区のマイドームおおさかで開催予定。日本に限らず世界の繊維産業にとって重要な生産基地ながら、変化を迫られる中国。その最新の実験場である江蘇省からの模索と提案を次回も期待したい。

(おわり)