転換期の“世界の工場”/江蘇省大阪展レビュー(前)/適地生産への対応迫られる

2018年05月31日 (木曜日)

 大阪市中央区のマイドームおおさかで開かれた「第22回中国江蘇省輸出商品展示会」(日中経済貿易センター主催)が24日、3日間の会期を終え、閉幕した。主催者発表の来場者数は2750人。同展は中国展示会で最多の開催歴を持ち、衣料以外に生活雑貨など出展分野の広さも特徴とする。それだけに中国企業によるOEMの抱える針路と課題を象徴的に示してもいる。

 今回は約160社が参加し、約240小間を構えた。繊維関連は前回より2割増の110社。その多くを占めるアパレルOEMでは、国営企業や大手が自社工場のODM対応など生産体制の高度化の一方、東南アジア縫製を絡めた納期面や価格面の柔軟な対応力を訴求する姿勢を年々強めている。

 大手で同じグループの江蘇海企長城、江蘇海企国際はともに、アウターからビジネスシャツ、ユニフォーム、子供服、靴下まで幅広く提案。強化中の東南アジア縫製も訴求した。トランプ米大統領就任後の対米貿易の先行き懸念も背景に、欧米主体で日本向けが少なかった部署も出展。欧米向けも長く手掛けるODM提案や小ロット対応と納期対応に優れる中国自社工場と東南アジア縫製の使い分けを提案した。

 大手で適地生産の追求が進む一方、国内生産のみの中小メーカーは価格対応力と高品質のバランスという強みを改めて強調する。ユニフォーム縫製の南京韓浦進出口は中国生産のみ。10年超の対日経験に基づく品質安定性やクレーム発生率の低さを訴求。自社、協力工場ともに人件費の低い省北部に立地するため、コスト対応力も訴求する。

 ニット縫製の南京臥虹紡織品は大阪での展示会は初出展。やはり長い対日OEM経験を背景に、定評のある受注後約1カ月の短納期対応や、自社企画編み地によるODM対応を訴求した。

 ただ、いずれも、「人件費急騰は以前ほどではないが年々収益を圧迫。副資材や梱包(こんぽう)材も値上がりする中、コスト削減はそろそろ限界」と、苦しい胸の内ものぞかせる。

 新たな切り口を打ち出したのは初出展の南通億森外貿綜合服務。欧米や南アフリカに広がる自社グループ物流や通関、国際決済などのサービス網を訴求。中国内の生産基盤と連携して、グローバル展開を目指す日本のアパレルや商社向けに支援を提案し、現状1割の日本市場開拓に取り組む。